甲子園の土
甲子園で負けたチームの選手たちがベンチ前の土を涙ながらにかき集めている姿は、見ている観客や視聴者の胸を打つ、最も印象的なシーンの1つです。今や、甲子園の風物詩として定着するに至った、甲子園の土の持ち帰りは一体いつから始まったのでしょうか。
この文化が始まった起源は諸説ありますが、1937年に巨人の監督も務めたことがある川上哲治さんが第23回大会の決勝戦で敗れ、甲子園の土をユニフォームのポケットに入れて持ち帰ったという説が有力なようです。川上さんはその土を母校のグラウンドに撒いて負けた悔しさをばねに飛躍を誓い、その後プロ野球選手として活躍し、レジェンドとなりました。
今では甲子園の舞台で敗れた高校球児はほぼ全員甲子園の土を持ち帰っています。それは負けた悔しさを忘れないため、記念品として、グラウンドに立てなかった仲間のためなど目的は多様化していますが、80年以上前に始まった文化が今でも残り続けているのはとても心を打たれます。
ちなみに、甲子園の土は黒土と砂をブレンドしたものです。黒土は岡山や三重、鹿児島など日本各地の黒土から厳選されたものを使用しており、砂は瀬戸内海の砂浜や中国福建省のものを使用して、それぞれブレンドされています。
また、春は雨が多いため砂の量を増やしたり、夏は野球ボールの視認性を上げるため黒土の割合を多くしたりするなど、高校球児に気持ちよくプレイしてもらうための細かい配慮が行き届いています。